平成25年4月1日から、「教育資金の一括贈与に係る非課税措置」が創設されました。
本制度のポイントは、平成27年12月末までの間、両親や祖父母等の直系尊属から子・孫等名義の金融機関口座等へ一括拠出した教育資金について、子・孫ごとに1,500万円まで(そのうち、学校等以外の者に支払われるものは500万円まで)を贈与税非課税とする点です。
本制度を利用するには、当該商品を取扱う金融機関との間で教育資金管理契約を結んで子や孫名義の専用口座等を開設し、「教育資金非課税申告書」を金融機関経由で税務署に提出する必要があります。口座開設は1つの金融機関に限られ、変更も不可です。
受贈者である子や孫が当該口座から教育資金を払い出すには、支払った教育資金の領収証等を金融機関にその都度提出して払い出す方式と、払い出し時には特に確認をせずに1年分の領収証等を翌年3月15日までにまとめて金融機関に提出する方式があります。
そして、子や孫が30歳に達した時点で当該口座に資金が残っていた場合は、その残額に対して贈与税が課税されます。したがって、贈与金額を幾らにするかは慎重に検討する必要があります。
本制度で認められる教育資金の範囲としては、例えば、学校等へ支払う入学金・授業料・学校給食費・修学旅行費・学用品費等です。学校等には、小・中・高・大学は勿論、幼稚園や保育園や専修学校、インターナショナルスクールや海外の学校も含まれます。
一方、「学校以外の者に対して教育のために支払われるものとして社会通念上相当と認められる費用」としては、例えば、学習塾・家庭教師・スイミングスクール・ピアノ教室・習字教室・そろばん教室等の入学金や月謝等があります。
本制度は、教育資金が必要な孫やその親にとって非常にありがたい制度です。また、祖父母にとっても、教育資金という有意義な形で孫にお金を残せるだけでなく、相続税を確実に節税できるというメリットがあります。
例えば孫が4人いれば、1,500万円×4人で一気に6,000万円もの現金を税負担なしで孫に移転させることができ、その分祖父母の保有資産は減少します。暦年贈与のような3年分持ち戻しといった規定も全くありませんので、将来かかってくる相続税をかなり節税することが期待できそうです。
しかし、本制度を実質的に利用できるのは一部の富裕層に限られるでしょう。幾ら可愛い孫のためとはいえ、将来かかるであろう教育資金を事前に一括贈与できる高齢者がそれ程多くいるとは思えないからです。
では、富裕層以外の一般の高齢者が税負担無しに孫に教育資金を贈与する方法は何かないのか?手段は2つあります。
1つは、受贈者1人あたり年間110万円以内の贈与です。これなら贈与税の基礎控除内であり税金はかかりません。
もう1つは、“通常必要と認められるもの”を“必要な都度”贈与する方法。扶養義務者からの教育費の“その都度贈与”は、現行制度でも非課税なのです。民法上の扶養義務者には「直系血族」が含まれているので、祖父母は孫の扶養義務者。しかも、「生計が一緒でなければ」とか「同居していなければ」といった条件は一切付いていません。
また、“通常必要と認められるもの”は、「被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産」と規定されていますから、金額の多寡は原則として関係ありません。
ただし、受贈者である孫が当該金銭を教育費以外に使った場合は非課税とはならないので、注意が必要です。また、事前の一括贈与ができない、教育資金であることの証明をしなければならない、祖父母が亡くなるとその先は贈与ができない、といった難点もあります。
孫の教育資金であれば、やり方次第で「一括」でも「その都度」でも税金の負担無しで贈与することが可能です。また、年間110万円以内の贈与ならそもそも無税です。自分自身の今後の生活費や将来の老人ホーム等への入所資金等をきちんと確保した上で、余裕があれば孫への教育資金の贈与を検討してみては如何でしょうか。
可愛い孫の「ありがとう」の声も直接聞くことができます。ただし、例えば長男の子と長女の子がいる場合に、その年齢や学校によって贈与金額に大きな差を付けてしまうと、相続時に長男と長女の遺産分割争いのタネにもなりかねません。その点もご注意ください。